こんにちは!元オーラルケア製品開発者のしーか先生です!!
今日は「研磨剤フリー」について、製品開発者の意見をまとめたいと思います。
よく「歯のエナメル質を削ってしまう」、「歯茎を傷つけてしまう」という意見から、研磨剤フリーをおすすめしているのを見ませんか?
ここでは研磨剤のメリットとデメリットについても書きましたので、参考にして下さい!
研磨剤とは
研磨剤の役割は「歯に付着した歯垢、歯石類を除去して歯面に生来の光沢を与えることである。この時、口腔内の汚物や細菌を物理的に吸着、除去する作用も働く。」とされています。
また、研磨剤の条件というものがあります。
① 無味無臭の粉体であって、色は白色が望ましいこと。
② 歯質を傷つけないよう硬度は3またはそれ以下であること。また、粒子の結晶形は、針状や棒状など歯牙を傷つけやすい形状のものは避けること。
③ 粒子径は、1~10μmの細かさであること。
④ pHは弱酸性、中性あるいは弱アルカリ性であること。
⑤ 水に不溶であること。
上記のような条件がありますが、そのような詳細な情報は公開しないため、該当しているものでも研磨剤以外の配合目的で配合されていることは多々あります。
研磨剤の種類
歯磨き剤に使用されている研磨剤はいくつかあり、代表的なものについて解説していきます。
リン酸水素カルシウム
歯磨き剤に使用されるリン酸カルシウムは以下の3つが代表的です。
① 第2リン酸カルシウム
② 第3リン酸カルシウム
③ ピロリン酸カルシウム
この中でよく使用されていますのが、①の第2リン酸カルシウムで、正式名を「リン酸水素カルシウム」と呼びます。
この研磨剤は白色度が高く、粉体自体の味もなく、pHも中性であることから使用感が好まれます。
磨いたときシャリシャリしたような感じがあります。
ただし、マグネシウム塩などの安定化剤がないと結晶変化を起こし、チューブの中で固化することがあります。
また、カルシウムなのでフッ素の代表ともいえるフッ化ナトリウムと反応し、フッ化カルシウムを形成します。
そのため、歯磨き剤のフッ素の効果を弱めてしまうため、この組み合わせは避けるよう開発されています。
炭酸カルシウム
重質炭酸カルシウムと軽質炭酸カルシウムの2種類があり、粒子の大きさや嵩が異なります。
こちらは昔よく使われていた研磨剤となります。
原料価格がリン酸水素カルシウムや無水ケイ酸と比べかなり安いため、重い感じの使用感で価格を抑えたいときに向いている原料です。
こちらもリン酸水素カルシウムと同様、フッ化ナトリウムと反応し、フッ化カルシウムを形成するため、歯磨き剤のフッ素の効果を弱めてしまいます。
最近は、次に記載する無水ケイ酸が歯磨き剤の研磨剤の主流となっております。
無水ケイ酸
無水ケイ酸は別名「シリカ」と呼ばれており、カルシウム塩ではないため、フッ化ナトリウムとの相性も良いです。
この無水ケイ酸はグレードによって特性が大きく異なります。
例えば、同じ無水ケイ酸でも研磨性や増粘性が大きく異なるため、配合目的が「粘度調整剤」や「清掃剤」と様々です。
水酸化アルミニウム
配合した製剤はあまり多くありませんが、一部の歯磨き剤で配合されています。
水酸化アルミニウムは研磨剤の中でも、比較的研磨力(汚れを落とす力)が高いと言われております。
研磨剤のメリット・デメリット
それでは研磨剤のメリット・デメリットについてまとめます。
❑ 汚れを落としやすい。
☞ 虫歯になりにくく、口臭の抑制などにもつながります!
❑ 磨き心地が良かったりする。
❑ 歯のエナメル質を削る可能性がある。
❑ 歯茎を傷つける可能性がある。
研磨剤フリー
研磨剤の内容と種類、メリット・デメリットについて説明しました。
それでは研磨剤フリーについて考えていきましょう。
研磨剤の役割は「歯に付着した歯垢、歯石類を除去して歯面に生来の光沢を与えることである。この時、口腔内の汚物や細菌を物理的に吸着、除去する作用も働く。」と冒頭で説明しました。
この汚れを落とすという役割は、歯磨き剤として基本的ですが重要な役割だと思います。
また、「研磨剤フリー」という表記は、成分表示を見て「研磨剤」と書かれたものが無ければ書くことができます。
つまり、先ほど研磨剤として紹介しました無水ケイ酸の配合目的を「粘度調整剤」にしていれば、「研磨剤フリー」とかけてしまうのです。
そのため、本当に研磨力のない歯磨き剤を選びたい場合は、透明なジェル状の歯磨き剤を選ぶと良いでしょう。
研磨力のある粉成分は基本的に白色で水に溶けないため、透明なジェル状の歯磨き剤は研磨力はありません。
ただし、ジェル状の歯磨き剤はブラッシングの際に滑ってしまい、汚れ落ちに難があります。
そのため、ジェル状の歯磨き剤でも汚れ除去能の高い「ポリリン酸ナトリウム」や「メタリン酸ナトリウム」が配合された歯磨き剤をおすすめします。
私の意見としましては、ブラッシングの力が強い人や電動歯ブラシを使用しているかた、歯茎が弱っているかたは研磨剤フリーの歯磨き剤。
その他のかたは、研磨剤を配合した製品で問題ないと考えております。
いかがでしたか?
研磨剤の内容から研磨剤フリーについて書きました。
研磨剤は汚れを落とす補助的な役割がありますので、一概に研磨剤フリーが良いとは言えないと思います。